五竜T行事「スキー技術強化合宿・インタビュー編」
平成19年1月12日(金)〜14日(日)白馬五竜スキー場 大井智子 広報委員 |
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◆切り替え後の、ポジション移動が少ないです本部宿「ウルル」の地下室で行われた「強化合宿」のミーティングが終了した。せっかくなので、講師の岡田慎さん、班員でA指定選手の中村浩章さん、園部SAK専門委員、SAK理事で教育本部強化委員会の担当理事の清水忠さんに残ってもらい、「強化合宿」を総括するためのインタビューに答えてもらった。 トップバッターは22歳の岡田慎さん。新潟県十日町スキークラブに所属する。明日から始まる「エキスパート講習会」に呼ばれた、4人いる外部講師のうちの一人で、今日だけ強化合宿に入ってもらった。岡田さんは、「今日はすごくいいバーンで、天気も雪質も良く、神奈川県の練習というより僕の練習をさせてもらった感じです」と奥ゆかしい。最初に、「雪なし県のSAKのスキーヤーに足りないものは何ですか?」と聞いてみた。 すかさず、「切り換えたあとの、ポジションの移動の量が少ないですね」と答えが返ってきた。さらに、「全体的に、みなすぐに角を立ててしまいます。これは神奈川県のスキーヤーに限らず言えることです」と指摘してくれた。ふだんはガーラ湯沢で勤務しているという岡田さんは、「今日は、そのきっかけづくりを練習しました。普段の練習で意識している感覚を伝えたつもりです」と話してくれた。今日のアドバイスは、みんなの大きなヒントになったと思います。ありがとうございました。 場面は大きく跳ぶが、翌日、雪上で「岡田・エキスパート講習会」と何度か遭遇した。班員の方に感想を聞くことができたので、載せておきたい。7年前に準指導員を取得し、現在は正指導員の37歳の男性だ。 「技術選には出ていませんが、テクニカルプライズは目指しています。普通の研修会に出ても、『先生方、滑ってください』と言われ、『いいですね』とコメントされるぐらい。自分にとって、あまり意味を感じることができませんでした。岡田講師のエキスパート講習会は、最初はベーシックな内容で、だんだん発展的となり、2軸の動きとなりました。できないと、辛らつなコメントもきます。去年はクリニックに参加しました。事前に『SAK手続き要項』を見て、有資格者用の強化合宿があると知っていましたが、定員になってしまったので。エキスパート講習会は、いい試みだと思います。お金がかかるのでもっと安いと最高ですが。今日の講習では、小手先でうまく見せるのではなく、ベーシックなことが大事なんだと、改めて感じることができました」。そう話してくれた彼は、「生涯、向上を目指します」と締めくくってくれた。ありがとうございました。
◆基礎スキーが楽しい!場面は、本部宿「ウルル」に戻る。続けて、神奈川県の期待の星、A指定選手の中村浩章さんにもインタビューさせてもらった。岡田さんとは、中学校が同窓だ。 中村さんは競技出身。小学校3年から高校まで競技スキーを続け、「高校卒業と同時にスキーはやめようと思っていた」という。たまたま卒業式の翌日、友人に「1級を受けに行こう」と誘われて、受検に行った浦佐スキー場で「よかったら、スキー学校で働かない?」と勧誘を受けたのが、再びスキーを続けることになったきっかけだ。その冬から浦佐スキー場で勤務したという。浦佐で初めて基礎スキーを知った中村さんは、「競技に比べて頭を使うものだと感じました。運動を理解することによって、体の使い方の仕組みがわかってくる」と思ったという。 なぜ、高校生だった中村さんは、スキーをやめようと思ったのか……。「ずっと競技の世界にいて、速さを求め、勝つためにスキーをやっていました。それは楽しいものじゃなかった。勝たないと楽しくないのです。浦佐スキー場で、初めて基礎スキーをやって感じたのは、『みんな滑っていること自体を楽しんでいるんだな』ということです。だれもが技術を探求することに熱心で、スキーに一生懸命になっている。できたことに、喜びを感じていました。高校時代は、合宿でニュージーランドに行ったりして、3学期は学校の友達と遊ぶことができずに、つまらないと感じたのです。子どものころは、滑っていてとても楽しかったのに」(中村さん)と振り返る。
◆もっと不整地バーンで楽しもう!中村さんは、ずっと新潟県にいたが、仕事の関係で神奈川県にやってきて4年前からSAKに移籍した。その中村さんにも、「神奈川県のスキーヤーには何が足りないでしょうかね」と質問してみた。 中村さんは、「整地されたバーンで、外スキーがどうだ、内スキーがどうだと悩むのでなく、不整地バーンや山の中に入り、『この斜面を降りてみよう』と思った方が、技術は身につきます。コブの中での大回りでは飛んでみて、もっと楽しめばいいのです。僕も、スキーの技術を追求することで、スキーの楽しさを追求するようになりました。スキーはレジャースポーツだと思うのです」と話してくれた。 最後に、昼間、気になった髪飾りについて聞いてみた。中村さんは、にこにこっとしながら、「おしゃれだと思って、ゴーグルにつけています。スキーの講師には、かたい人が多い。若い人になじんでもらうには、ウエアの着こなしなど、最初は見た目だと思うのです。髪飾りは、スキー場で生徒を教えるときにもつけています。最初はだいぶ前に自分でつけてみたのですが、毎年飾りをくれる人がいて、いつもつけるようになりました」と教えてくれた。岡田さんは、中学校の1学年下だ。今回偶然再会して、「えっ」とびっくりしたそうだ。 うーん中村さん!!なんて味わい深いキャラクターでしょう。素直にていねいに、一つずつ質問に答えてくださり、ありがとうございました!
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園部修さん |
熱烈指導中です |
最後に、強化合宿のミーティングに参加していたSAK教育本部の清水忠理事に、「他県から講師を派遣したねらい」について話を聞いた。
まずは、今回の強化合宿についてだ。強化合宿は、SAKのA、B、Cの指定選手と、一般の人で県の技術選に出る人を対象に開いている。
清水さんは、「神奈川県のトップのA指定選手であっても、全日本技術選では100位近辺です。レベルの差はまだ大きく開いています。その全日本技術選で、岡田慎さんは去年の決勝で19位となり、新人賞を獲得しています。そのトップクラスの選手が来て、滑って、包み隠さず話をしてくれる。みんな刺激を受けると思いました。とくに、深いねらいがあったわけではありません。今回、参加した人は、いいものを得たと思います。今後、それが形として現れてくると思っています。ミーティングで質問し、一つでも二つでも学んで技術を伸ばしてもらいたいと思っています」と答えてくれた。
「ポジションや運動は大切です。トップレベルの選手でも、養成講習会で教える専門委員も、基本的なことは同じです。そこをきちんと押さえられるかどうかが、重要です。トップ選手のすごいところは、どんな斜面でも自分の滑りをアピールできるところです」(清水さん)。
今日、半日ほど強化合宿と同行して、「滑りのレベルはいろいろあっても、基本は同じ」と私も感じていた。洗練された滑りを身につけている岡田さんが班員に伝えようとしたのは、スキーの基本的なことだった。スキーが上手い人こそ、基本を大切にしているのだ。
手品もうまい、清水忠さん |
強化合宿ミーティングでごあいさつ |
岡田さんは、明日からは「エキスパート講習会」の講師を担当する。最後に清水さんに、「エキスパート講習会に外部講師を呼ぶことになったきっかけ」について質問。
「片忠夫SAK専務理事から『今期は研修会にもっと参加してもらえるようにしたい。先生方が参加したくなるような企画を作りましょう』という提案を受け、新企画としてエキスパート講習会を立ち上げたのです」(清水さん)。ちなみに、今年の五竜行事Tの参加者は350人。長く雪が降らなかったこともあり、控えめだったようだ。
研修会を魅力づける企画の一つとして、技術を高めたい受講生を集め、技術レベルの高い講師を他県から招いた。エキスパート講習会に参加すれば、研修会を受講したと認められるようにもした。実は、去年の五竜Tの「レベルアップ講習会」でも、初めて有資格者の班を設けた。それを進化させ、外部講師を呼んだのが、今年のエキスパート講習会だ。参加費用は3日間で1万円と設定した。
清水さんは、「神奈川県スキー連盟の有資格者は2000人以上。けれど研修会に参加するのは、その人たちの半分だけ。参加しない人たちに、どんな形であっても研修会に戻ってきてほしい。その受け皿としての企画です。『研修会に行くとお金はかかるけどおもしろいよ』と思ってもらいたくて、今回は、全日本技術選での上位の選手を呼びました。エキスパート講習会を盛り上げ、有資格者の先生方に一人でも多く研修会に参加してほしいというのが、教育本部の方針です」と力をこめて語ってく