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五竜T行事  障害をもつ方のためのスキー教室
 
平成18年1月13日(金)〜15日(日)
大井智子 広報委員

HC講師のための体験セミナー

ボーゲンでダダダと移動 越前谷事務局長

◆五竜行事T「障害をもつ方のためのスキー教室」

●障害者指導セミナー

 いいもりゲレンデを、アウトリガーをつけたハンディキャップ委員やボランティア講師がするすると滑り降りていく。一方で、蛍光色の緑のひもで胴体をつながれた越前谷芳隆ハンディキャップ(HC)担当事務局長が、ボーゲンでダダダと移動していった。

 1月14日〜15日に開催される「障害をもつ方のスキー教室」に先だって、13日の雪上では、障害者を指導する講師のための体験セミナーが行われていた。去年の秋はHC委員で、目隠しをして街中を歩く体験もしたという。

 メンバーは、主に「視覚障害」と「知的障害」の指導を学ぶ2班に分かれ、各班をセミナー特別講師の馬場賢親NPO法人プレジャーサポート協会理事長と、内海弘和HC委員が受け持った。

 見てて「おおっ」と思ったのは、スキーで暴走してしまった視覚障害者を止めるわざだ。「後ろから追っかけていって、ぐっと近寄り、相手のブーツのちよっと前に自分のブーツを寄せて、沿えた手で山側に腰を持っていってあげる」のだそうだ。ポイントは、相手のスピードに合わせて当てて行くことと、「ブレーキかけますよ」「近づきますよ」と声をかけることだ。と、馬場理事長が講習していた。


止める技はうまくいきました

アウトリガーも体験

◆「楽しそうに講習は続く」

 では、実践。いかに相手に負担をかけずに当たって行くかが、難しい。寄せるだけで精一杯の人や、「とめますーっ」と叫びつつ、おのれがすてんと転んでしまった人もいた。

 さらに難易度が上がり、「体当たり」バージョンや、暴走者の前に出て逆プルークで止めるバージョンが実践された。おっかない。とくに「体当たり」はなかなか勇気がいりそうだ。大きな体の暴走演技者に跳ね飛ばされて、転倒してしまった講習者に、どっと笑いが起きるシーンもあった。みな、初めての技術にとまどいつつも、ニコニコと楽しそうだ。こんなにうれしそうな人たちが教えてくれたら、きっと楽しい講習会になるだろうなあと思った。

 アウトリガーは8万円、チェアスキーは14〜15万円ほどのものと、30〜40万円ほどするものがあるという。アメリカからの輸入品で、受注生産をしているためコストが下がらないそうだ。長野オリンピックの時、自転車さんがチェアスキーづくりに挑む話がテレビで放映されていたけど、大量生産には至らないのだろうか。

 アウトリガーとチェアスキーの体験も行われた。体験アウトリガーの注意点は、「外のリガーで誘導してターンを描くこと。足に頼って滑ってはなりません」。みな足前がいいので、ややもするといんちきをして、足だけ使ってびゅんびゅん滑ってしまうからだ。


アウトリガーの講習中

すいすいとおりていく大塚さん

●スキー教室

 翌14日。しばし雨がやんでいた午前中。ゲレンデでは、チェアスキーとアウトリガーの講習が行われていた。チェアスキーの大塚さんを、馬場理事長が誘導する。いいもりからとおみゲレンデへと戻る途中、そこそこスキーヤーがいる中を、馬場理事長は瞬時にコースを見つけて、安全な環境へと大塚さんを導いていく。大塚さんも気持ちよさそうに、すいすいとそのラインを滑り降りていく。さすがだ。

 さらにいいもりゲレンデで、アウトリガーを操る西城さんを発見。去年めでたく2級に合格して心から喜んでいた西城さんに、見ていた私も感動した。よーし、追いついてカメラに撮ろう、と思って後を滑っていくと、な、なんと。速い!!何本か真剣に追っかけたのだが、なかなか追いつくことができなきかった。あれからの秘密練習ぶりをにおわせる、見事な滑りっぷりだった。

 翌15日には、まずまずの天候の中、級別テスト(別項「級別テスト」)が行われた。


HC委員の八木さん(左)

スキーって楽しいですよねぇ

●講師の感想

 去年、本部宿「ウルル」で同室だった八木智英子HC委員には、初日の講師セミナーで「大井さんも、やってみましょうよ」と、アウトリガーなどの体験をなんべんもさそってもらったのだが、次にパトロール取材が控えていたのと、勇気がなかったため体験できなかった。

 今回の講師セミナーは今年からの試みだが、体験者したHC委員やボランティアの評判はすこぶるよかった。

 「目の見えない人には、ゲレンデの広さ、天候、混み具合、リフトの乗り降りの状況など、周りの状況を知らせねばならないことを教えてもらった。まさに、なるほどなるほどで、アイマスクをすると滑っている時のスピード感もわからない。相手の人が教えてくれて初めて、自分はスピードが出ているのかと分かった。視覚障害の方には、スピードが出ている、人がいる、スキー場のどこにいる、といった状況を一つひとつ言葉で説明しないとわからないと学んだ」(40代、女性)

◆「カレーライスを食べながら」

 初日の講師セミナーでは、HC委員の人たちと一緒にお昼ごはんを食べた。エスカルプラザのカレーライスを食べながら、馬場氏とともにセミナー講師を勤めた内海弘和HC委員に話を聞いた。やはりNPO法人プレジャーサポート協会のメンバーでもある内海氏は、普段から、知的障害者、身体障害者の人たちのほか、高齢者などを対象に、初めてスキー、パラグライダー、ダイビングなどを体験する人たちのサポートもしているそうだ。

 内海氏は、「今回の講師セミナーでは、危険を回避するための基本的なことを教えた。みんな楽しそうに講習を受けてくれてよかった。障害をもった人でも、健常者でも、スキーを教える時は楽しく講習して、笑って帰ってもらうことが大事だ。講習では難しいスキー用語は一切使わない。『外向傾』と言うのでなく、『外向いて』『肩振って』などと表現する。暴走している人はエッジが立っているからで、そんなときは体も固まっている。どこか体を引っ張って、片方の板をフラットにすれば、あとはだいじょうぶ」と教えてくれた。

 なるほど。楽しく帰ってもらうことと、難しい専門用語を使わないことは、どんな講習でも基本で、一番大切なことかもしれないと思った。 

 


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