講演「地球温暖化とスノースポーツ」:佐藤拓也 元SAJデモンストレーター


 皆さんこんにちは。僕はスキー連盟の活動からは大分離れていましたが、久しぶりにお声をかけていただきまして、新鮮な気持ちで、また楽しみにして参りました。

 私が働いているパタゴニアという会社は、ミッションとして「環境問題を解決するために存在する」としています。よって、すべてのアクションが必ず環境問題に繋がっていくように、それが環境にとって良いことなのか、ダメージを与えるものなのか、常に判断基準に置くような会社です。普段は会社のスタッフに対して行っていますが、今日はスキーの先生方に知っていただきたいと思い、地球温暖化にテーマを絞りました。

 ご覧いただいている写真はヒマラヤですが、1978年、1989年を比べると氷河が少なくなっているのが分かると思います。この頃はまだ異常気象と言われていた時代です。更に1998年、2008年と見比べると、もっと氷河が少なくなり、池に解けた水が増えているのが見て分かると思います。

 国連IPCCが2014年に発表した第5次評価報告書によると、対策をとらず今のまま二酸化炭素(CO2)を出し続けた場合、気温は2.6〜4.8℃上昇すると言われています。一方、気温上昇を低く抑えるための対策をとった場合、気温は0.3〜1.7℃の上昇で済むとなっています。ちなみに第1次評価報告書が発表された1990年当時はまだ「地球に何か起きているかもしれないから調べないといけない」「地球温暖化が起きているかもしれない」との報告内容でした。それから5.6年おきごとに報告書が出ていますが、今地球温暖化が間違いなく進んでいる状態へ変わってきています。そして2015年に発表されたのが「パリ協定」です。
・すべての国が参加する法的拘束力のある枠組み。
・気温上昇を産業革命的に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑えるよう努力する 。
・そのため、できる限り早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半(2050年)には温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる。(今世紀後半には実質的ゼロとするよう削減に取り組む)
・年ごとに温室効果ガスの削減目標を提出し、レビューすることを義務付け。
しかしながら、翌年2016年あっという間にトランプ政権が離脱を発表してしまいました。

<地球温暖化がもたらすその他のインパクト>
・2050年までに1億4,300万人の気候難民がアフリカ、東南アジア、ラテンアメリカで発生すると予測される
・2017年にカルフォルニア史上最大規模の山火事発生
・1日125憶トンの氷の融解

<地球温暖化のメカニズム>
 太陽から注がれるエネルギーが地球にぶつかると、半分ほどが地球に吸収されます。残りの半分は地球から反射して、また大気に戻っていくメカニズムになっています。それに対して温室効果ガスが溜まってくると、外に逃げるエネルギーを閉じ込めてしまいます。それにより地球がどんどん温まっていく現象が今起きています。そしてその温室効果ガスの層が厚くなってきているのが大きな問題となっています。この問題が本当の意味で怖いのは、今ではなく将来です。これから先、ジュニアの子たちがスキーを続けられるのか?そんな問題とも向き合う状況があると思います。

<二酸化炭素排出量を抑えるために>
・仲間と乗り合いでスキー場に向かう
・再生可能エネルギーで運営されるスキー場の実現化を後押しする「POW」 白馬バレー10か所のスキー場で実現化を目指しています
・石炭火力発電所の新設を止める
・パタゴニアのビールを飲む
排出された二酸化炭素を地中に戻すために植物の力が有効です。パタゴニアでは農業分野に力を入れ始めました。その中でも麦を栽培しています。麦は世界中どこでも飲まれているビールがあり、パンにもパスタにもなり、ポテンシャルが高いです。ビールを飲みながら環境問題を考えましょう。

主催者より

 今回の特別講演では、参加頂いた方々からいろいろな意見を頂戴しました。
特別講演では、講演者がCO2削減に関心を持って頂くことを伝えたかった内容です。
付随する内容については、当連盟が支持するものではありません。
当連盟としては、公益財団法人として中立的立場であることを承知置き下さい。

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