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車山X行事 指導員研修会
2軸理論の実践研究 上田英之


開脚スタンスから内足主導で

山田委員長の2軸(北海道にて)

◆2軸理論の再整理と実践研究

 新しいスキー技術論である2軸理論については、新教程の発刊、市野聖治氏(全日本教育本部イクザミナー委員長)の一昨年、昨年の指導員研修会理論講演は、非常に興味深かった。そして、山田隆副会長(全日本教育本部広報委員長)が、昨年、今年と神奈川の雪上指導員研修会で、さらに判りやすい2軸理論の話をされていたことは、ご存知の方も多いと思います。
  今年度、指導員研修会にて、2軸理論の実践での方法について、研修会に参加した指導員の先生方に協力していただき、バリエーションの交換や研究を進めてきましたので、ご報告させていただきます。もちろん、確立された方法論などはなく、まだまだ研究レベルにあることをご理解ください。

◆2軸理論とは合理的な動作

 2軸理論はなにかと端的にいえば、合理的で効率的な動作の方法ということでしょう。これは新しいものでもなんでもありません。人間の赤ちゃんも初めて歩く時は2軸なのですから。動物の歩き方もそうです。右足を踏み出した時にその足と一緒に体を動かしていく感じになると思います。「ナンバ」「常足」など色々な人がさまざまな研究成果を発表していますので参考にしてください。

◆2軸理論とは内足主導

 2軸理論というのは、内足と外足ということではありません。左右の内足、つまり、右側なら右の内足、左がなら左の内足から動作することが、理にかなって効率的だということなのです。

◆中心軸と2軸理論、テールコントロールとトップコントロール

 ちょっとややこしい感じがしますが整理をして見ますと、

 中心軸を利用してきた滑りは、そのほとんどが外足主導の外向外傾の滑りとなります。スキー板の角付け角度が相対水平面を超えませんので、スキーの横方向の落下方向は谷側になり、いわゆるズレ、スキッドすることになります。これは、テールコントロール、トップ&テールコントロールに分類されています。

 2軸を利用する滑りは、内足主導の内向内傾のすべりとなります。スキー板の角付け角度が相対水平面を超えますので、スキーの横方向の落下は山側になり、板が食い込んで行く、カービングすることになります。これがトップコントロールに分類されるのです。

 物理学的な理論から見れば、中心軸=テールコントロール、2軸=トップコントロールと、非常に明確な話となります。

◆方法論の2つのアプローチ

 しかし、方法論では、2軸つまり、内足主導を理解するためのバリエーション研究では、内足を中心とした動きであるが、スキー板の角付け角度は相対水平面を越えない練習もしてきました。つまり、中心軸のすべりの中で2軸のイメージを体感するということです。
  実は、これは最高レベルの難易度の練習かもしれません。中心軸のバランス感覚の中で内足主導で滑るのですから。
  こうした練習は、中心軸の達人(つまりテールコントロール系のスキーの上手い人)でなければできない練習なのです。

 それとは別に、全くスキーを知らない人に教える方法論もあります。オフィシャルブックのDVD映像にあった、安全な緩斜面で滑り出し、バランスボールを行きたい方向へ向けるというものなどが代表的です。スキー写真家で評論家で世界的に有名な志賀仁郎さんは、「最近の進化したスキーでは、先生に教わらなくても、良い道具をそろえれば滑れる」とまで話されていますが、初心者へのアプローチは、非常に単純になってきていることも事実です。

 ある意味で、スキーの上手い人にはとても難しい方法、スキーが初めてな人には、単純な方法ということでしょうが、ややこしいですね。


外足を先行させる(車山X)

外足を先行させる(車山X)

◆バリエーション研究 中心軸の達人用

・山周り

従来からの方法だが、横スペースを使う。いまひとつ実感に結びつかない。

・内足ターン

これは有効とはいえ、特に低速では転倒・骨折の危険があり勧められない。かなりアクロバティックで、県連でも骨折事故が発生した。無理な練習はやめましょう。

・レールターン

非常に有効だが、これが出来たら苦労しない。中心軸達人は、非常に巧妙にスキッドして、あたかもレールターンのような操作をしてしまう。(見ればわかりますが…)

・ 内足を外足より前に出さない

前後差を無くす練習。外向傾から正対への効果あるが、あくまでも外足荷重である。

・外足を走らせるイメージ

前のバリエーションとは同じで正対への効果がある。より積極的に板を走らせていくといイメージは有効だが、これも外足荷重である。

・内足より外足を先行させる

これは、内足を中心に、外足が遅れないように常に先行させるような意識で滑ってみるというもので、内足の意識には非常に有効。緩斜面でスキッドしながらでもOK.2軸の理解体験可能で有効。ある意味、内足が主輪、外足が補助輪のような、自転車感覚。

・やや広いスタンスで滑り出し、そのスタンスを保つ

スタンス幅を変化させないことは、スキー操作に制約をかけること。中心軸スキーでは、いろいろなキッカケを使って、スキーを動かして(実際は落下運動)いるので、それを矯正する。2軸へは遠回りであるが、実は、このバリエーションは、いわゆる問題のあるターンのキッカケを顕にしてくれるので、その意味では有効。

◆バリエーション研究 スキー初心者用

・バランスボール(オフィシャルブック付属DVDから)

緩斜面で行う。何の意識もなく連続ターンの可能性大。

・外腰の外旋(一昨年の中央研修会での研究テーマ)

緩斜面で。実際は、行きたい方向へ脚をガニ股にすることでアウトエッジが立って、ターンが行われる。連続ターンも可能だが、脚の意識は難しい。

・上体の回旋

緩斜面で滑り出し、両手を水平にして大きく状態を回旋させると、回旋させた方向にターンが行われる。極端な動作だがターンの体感には非常に効果的である。


外足を先行させる(車山X)

外足を先行させる(車山X)

◆スキー経験者へのプログラム研究 〜 まずはオープンスタンスから

 ということで、スキーが上手い人達への導入プログラムです。実は、研修会などでご一緒させていただきますと、3割ぐらい方々はまだこういう滑りを体験したことがなく、このような方の為に、どうしたら理解していただけるかという研究プログラムです。

 山田委員長から、まずオープンスタンスで滑ってみるというテーマが与えられました。

この時、
@大きな上下運動をしない(抜重して切り替えを行わない)
Aスタンス幅を保つ(変化させない)

 というイメージで滑ることがポイントです。まず、抜重(上下運動)で切り換えをしないように注意をします。さらに、スタンス幅を保って滑ります。スタンス幅が変わる場合は要注意です。これは、そもそも切換えという重要なシーンで、シュテム操作をしてみたり、内足をリフトしたり、外向傾のポジション入れ替えたり、外腰を送り出したりと、さまざまな問題が見えるのです。
  実は、スキーに慣れている人ほど、今までの経験や体験で切り換えのシーンで、独特のキッカケを持っていることが多いのだと考えられます。これらは、上達すればするほど、スムーズになり、表に出てきませんが、実は重要なキッカケとして残っているのです。
 結果として、切り換えにおける自分のキッカケを制限させるこの練習を行うことで、その独自のキッカケが良く見えるので重宝しています。これらは、個々の滑りへの具体的なアドバイスと対処に非常に有効なのです。

◆2軸のバリエーション 〜 外足を先行させる

 多くの先生方と意見交換をしましたが、かなり有効なバリエーションとして、「外足を先行させる」というものがあります。実は、この車山研修に入る前に、山田委員長からも、「外足が遅れないように滑ってみろ」とアドバイスをいただいていたのでした。

  実際、外足に荷重していきますと内足と外足の前後差が出てきます。結果的に外向傾ということになります。これを矯正するバリエーションに「内足を遅らせる」というパターンがありますが、どうも対処療法的な感じもあります。
  「外足を先行させる」という練習を、前段で行ったオープンスタンスと合わせて行いますと、当然ですが、主導が内足になります。そうして外足を先行させるように(実際は先行させなくてもよく、そのイメージで良い)意識するのです。たったこれだけの練習なのですが、滑っている意識はかなりの違和感が生じます。外足が主導ではないのでなにか不安定な感じがあるのでしょうか。

◆違和感があるが、シルエットが変化する

 しかし、滑っているシルエットがかなり変化してくるのです。研修会に参加している有資格者の先生方でも変化が顕著な方がいらっしゃいました。それは、スキーの板が身体の下に来ること(いわゆる腰がはずれない)、外足荷重が強い結果出来ていた内足と外足の膝が接近して膝下が三角形になってしまう現象も改善されるということです。さらに、2本の板を有効に使えるようになる(特に内スキーの外エッジ)のでコントロールが容易になるという作用もありました。
  練習を進めていくと、当たり前ですが、内足への荷重を増やしていくことが容易に行えるのです。ただし、私はこの練習のおかげで筋肉痛はまったくありませんでしたが、股関節が痛くなりました。(笑)

◆まだまだ研究段階だが

 今シーズン、多くに有資格者の先生方にご協力いただきました。多くのバリエーションを提供していただきありがとうございます。 まだまだ研究段階の域を出ませんが、2軸に関してさらに研究を進めていきたいと考えておりますので、ご理解をいただき、またご協力をお願いいたします。                                                                                          

外足を先行させる(車山X)

外足を先行させる(車山X)

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