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南関東ブロック研修会
理論講演 2軸理論


山田隆主任講師

スキーは福島晃子?

◆2軸理論をよく理解してほしい

 2軸理論について、出来るだけ皆さんに理解をしていただきたいと思います。私を含めて、ここにいるブロック技術員の皆さんも、何十年も、外向傾を作れ、谷肩を下げろだの1軸つまり中心軸のスキーをやってきたわけです。簡単に2軸といって、両足を軸にして、内向内傾だと言われても理解出来ても、それを表現することがも難しいことも十分あるでしょう。しかし、入り口から嫌だと思うと、理解も出来ないし、教えることも出来ません。ぜひ、2軸というものを理解したうえで、謙虚に指導をしていただきたいと考えます。

◆2軸は1軸の延長には無い

 スキー連盟の中でこの理論を提唱しているのは、イクザミナー委員会の市野聖治委員長です。市野さんは、中心軸を修練させていくと2軸に発展していくという考えでは無く、中心軸と2軸とはまったく別のものであると説明しています。

◆なにか常識なのだろうか?

 あたらしい技術を覚えようとする意識が大切です。ある班で、ナンバの動きをやっていたときに、疑問をもった方もいらっしゃったようですが、右左と行進をするような現代の歩き方は、非常に自然のように思えますが、この歩き方は、明治政府が西洋式の軍隊を導入してからで、それ以前は、日本ではナンバで歩いていたと言われています。後でナンバのDVDを見ていただきますが、日本人は和服で行動していましたので、ナンバのような歩き方が着物にはなじんでおり、西洋風の歩き方では着物がはだけてしまうのです。つい100年くらい前までは、こちらが常識だったのです。

◆女子プロゴルフの福島晃子と同じ状況にある

 最近、あらゆるスポーツが2軸運動を取り入れて大きな成果をだしています。女子プロゴルフの宮里藍選手などは、まったく古いゴルフを知らないで、新しい技術に新しい道具で出てきて、あの素晴らしい成果を上げているのです。それで、福島晃子は、今年アメリカツアーから日本に帰ってきて3年がかりで新しい技術を覚えようと努力しているのです。我々のスキーが、ちょうど福島晃子と同じ状況にいるんだと考えていただくとわかりやすいと思います。


オートバイでの例

福留選手の例

◆ランディジョンソンとショルダーファースト

 アメリカのダイアモンドバックスという球団にランディジョンソンというピッチャーがいます。彼の年齢は40歳を過ぎておりますが、昨年ノーヒットノーランを達成しました。彼はショルダーファーストタイプのピッチャーなのです。実は、運動の形には2通りあるというのです。ショルダーファースト、ヒップファーストです。西部ライオンズの松坂投手は、ヒップファーストです。判りやすいのでオートバイでの違いをお見せします。ヒップファーストいうのはどちらかというと、力が必要です。いままでのスキーはどちらかというと、ヒップファーストです。そしてショルダーファーストのすべりが、内スキーに乗って無駄な力を使わない2軸といえるのです。ランディジョンソンは、前へつんのめる様な投げ方をします。自分の身体が落ちていく、落下運動を利用して、今でも速い球を投げているのです。

◆1軸(中心軸)と2軸

 今年に夏にありました、アテネオリンピックですが、国が強化策を行い大きな成果が出ました。市野さんに言わせると、平面で行われるスポーツは、すべて2軸で行われることが合理的なんだと話しています。
  ハンバー投げの室伏選手は、当初、中心軸で思いっきり回し、その遠心力で遠くへ飛ばす理論で投げていました。これは中京大学の教授でもある父親の理論でもあります。しかし、1年前に、この理論を捨てて、アメリカのコーチについたのです。アメリカのコーチは、ハンマーを出来るだけゆっくり回せと教え、そして最後の一投を2軸で投げる方法を教えたのです。その結果が金メダルとなりました。ただし、その差というのは30センチぐらいなのです。オリンピックレベルで中心軸と2軸の差は30センチしかないのですが、それがメダルの有無になるわけです。でも、少しでも2軸のほうが合理的であると理解をしてください。

◆福留選手の2軸への改造

 中日ドラゴンズの福留選手の比較写真です。昨年も使ったのですが、これを見ただけでは、どっちが良いのか判らないということで、この写真に線が入っています。左側が中心軸です。これは、小さい時に野球をやった時に、近所のおじさんコーチが、もっと脇を絞めろ、膝を内側へと言われて、これで野球を覚えたものです。
  しかし、最近大リーグなどの野球を見ていると、ガニ股でバットを振っています。そして素晴らしい成績を出しています。それが、福留選手の右側の構えなのです。


中心軸での押し

2軸での押し

◆簡単な実験 2軸の効果を実感する

 阿久津さんが右手で、園部君の左肩を押してみてください。それでは、阿久津さんが左手を上に上げて右手で、同じ力で園部君の左肩を押してみてください。2度目のほうが、力が強いのです。これが2軸です。左をフリーにした状態で右を押しますと、左の肩が下がりますので、力は逃げてしまい減少するのです。左手を上げて固定させる運動を、片側に蝶番のあるドア運動と表現する人もおります。ちょうど、中心軸は回転ドアのように、押すと反対側が引いて分散されてしまうことがお分かりでしょうか。ですから、左右の軸を別々に使い分ける2軸運動の方が、効果があるといえるのです。


馬の2軸

2軸と中心軸

◆馬も2軸

  馬の走りですが、2軸で内足主導で走っているのです。馬は、右前足を出すと、左前足は右を越えないのです。人間みたいに追い抜いて交差しないそうです。
  今の歩き方が慣れている人には絶対理解できないでしょうが、肩を踏み出した足と同じ方向に動かすと、消費エネルギーが小さいそうです。その逆は、最近人気のある、デューク更家さんのウーキングエキササイズです。この運動は、まさに中心軸運動をオーバーに行うことで、エネルギー消費を高めるのが目的となるのです。つまりダイエットに最適な非効率な運動ということなのです。


スキーの主導

スキーの重心軸

◆主導と重心軸の違い

  図の(a)の場合は、荷重が内足ということが誰でもわかります。では、(b)の様な、遠心力が働いて、外足に乗っているケースがあり外足主導ではないかという話しがあります。しかし、あくまでも重心軸と主導とは違うということです。荷重は外足でも、主導は内足なのです。
  また、主導というと、始動と勘違いしている人もいます。内スキーで始まるのではなく、常に内スキーで主導しているのです。

◆新しい技術には新しい指導法が

 広報委員会として、全日本のホームページを作っています。その中で、志賀仁郎さんと言う、高名な評論家で、全日本のアドバイザーに連載をお願いしているのですが、その志賀さんに話しを聞くと、初心者にスキーを上手く滑らせるにはどうしたらよいのかと言うと、ちゃんとしたカービングの板と道具を用意して、誰にも習わないでスキー場へ行けば、上手くなるというのです。
  ちょっと極端かもしれませんが、これは2つの指摘があると思います。1点は、新しい技術と道具は大きな可能性を持っていると思います。2軸の理論は、決して上級者のものではありません、先ほど見ていただいた、オフィシャルブック付属のDVDにありました、バランスボールでのバリエーションは、そのことの実験だと思います。もう1点は、指導方法の問題です。もう30年も前のアスペンのインタースキーで、世界はシュテムクリスチャニアを捨てたのです。これは、それまでパラレルクリスチャニアへの導入として用いられてきた、シュテムクリスチャニアでしたが、パラレルへの導入には不適切だと認めたことなのです。しかし、日本ではそれ以降もプルークボーゲン、シュテムターンを指導過程の中で重要視してきました。ある意味で遠回りであった感もあります。特に、今のカービングのスキーになってからは、なおさらだと思うのです。

◆ぜひ、双方向で楽しい講習会を

 これからは、そこに並べ、教えてやるという教え方では誰もついてきません。できるだけ楽しませて、生徒になぜという気持ちを起こさせ、ディスカッションするような姿が望ましいと思います。そういう意味では、この研修会ではナショナルデモンストレーターをディスカスしながら研修が行えたのは良かったと思っております。

◆参考資料

・ナンバ走り −気づきのスポーツ学− 人間工学研究所


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