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SAK技術選「ジャッジ」体験記
教育本部専門委員 伊藤明子
2001.5

   2001年3月、前年まで選手として出場していた私にとっては、できることなら体験したくない審判員(ジャッジ)という役目を果たすこととなった。
 なぜ、体験したくないか?それは、やっぱり恐怖でしたから・・・。それまで、選手として出場していて、どれだけ審判員を恨んだか・・・。本当は恨んでも仕方ない。結局のところは自分の実力の問題なのだけれど、点が出なかったとき、一瞬でもその矛先はジャッジに向く。
   
   選手の中には得点が発表されると「○○さんってば××点しか出してくれてな〜い!」ってすぐに誰が何点出したかを聞き分ける人もいる。私はどちらかというと、漠然と全体の点数しか聞いていないほうだから、悪い点が耳に入ると「え〜、なんで〜!」とジャッジ全体を恨む方。(ごめんなさい)ま、何年も予選に出ていると、ジャッジを恨んだところで点数が変わるわけでもなし、そんなことより次の種目に気持ちを切りかえる方が大事だ、ってことがわかるから、恨みつらみも一瞬で済むようになったけれど、それまでは競技終了後もみんなで愚痴って恨んでた
   
 
 たしかに納得のいかない点がでることもあった。全体になぜそういう観点で評価されるのか、っていうときもあった。 ブロック技術員になって最初の会議のときに、ちょっぴり正義感に燃えちゃって「もっとジャッジの人には勉強してもらいたいです。5人で上下10点差ということもありましたが、それはどうにもおかしいことです」なんて、主張してしまった。ベテランの皆さんからすれば、「なら、おまえはできるのか?」って感じだっただろう。私自身も「おいおい、おまえならできるというのか?」って思ったくらいだから。
   
   そして、シーズンイン。「あっこ、今年はジャッジだからな。よろしく!」って告げられたとき、「がーん!」って感じだった。「やばーい!やっぱり余計なこと言っちゃった!」。しかし、ここでビクビクするわけにはいかない。選手の方は予選で落ちるか、通るかによってシーズン後半の過ごし方が大きく変わる。必死なのだ。学生、会社員、フリーター。それぞれの環境でスキーをやってきた私にとって、この分かれ目がどれだけ大きなことであるかということはよくわかる。
   
   しかし、恨みの矛先の中に自分が入ると思うと、やはり恐ろしかった。が、ここは自分の経験を生かすときだろう。自分の経験をもとに公平なジャッジを実現する時だろう。そう思い、他県連や全日本でジャッジをしている人にも情報を得て、本番を向えた。選手とは違う緊張感があった。いざ、始まってみるとそれは確かに厳しいものだった。なにせ、今はスキーそのものの性能がいいから、点差が開かないのである。 うっかりすると、ごまかされてしまうのである。
   
   けれど、何人も見ていると次第にその差が少しずつ見えてくるようになった。また、総合滑降などは自分が選手のときに気づかなかったことが見えてきた。今までさんざん「ジャッジ席からの視点も必要だよ」と言われてきたけれど、実際にはどうしてもスタートからゴールを眺めてイメージすることが多かった。スタートからは急に見えた斜面もゴールからはそれほどの斜面には見えない。スタートからはうねって見える斜面もゴールからは見える範囲しか見えないのだから、ほぼまっすぐのバーンに見える。「去年、気づいていればな・・・」なんて思うポイントが次から次へと見えてくる。
   
   それと、オーラ!直接点数に関係するかどうかは置いておいて、選手によってオーラが違う気がした。これって、自信からくるものだろうか?スキーそのものはうまいけれど、オーラのない選手。やる気は満々だけれど、自己満足の人。なんとも言えぬ、こちらが圧倒されるオーラを持っている人。どう表現したらよいかわからぬのだが、滑り以外に何かが違う。「運も実力のうち」とはこのことかな?とも思った。
   
   自分が競技に参加していた頃、よく耳にしていた「心・技・体」のことばにも通じるかな?とも思う。当然、技術が優先されるわけだからオーラだけで点がつくわけではないが、「技術+オーラ」は強い。ジャッジもまさに「心・技・体」。いや、ジャッジの場合は「体・心・技」かな?なにせ、とっても寒いのだから・・・。
   
   それにしても、今までとまったく逆の立場にいる自分。なんだか、選手のみんながとっても、とーってもうらやましかった。勝つか負けるか、1本の滑りに集中してくる姿はうらやましかった。選手は選手でそれなりに辛い心境なのだが、なんだかあの緊張感が懐かしい気がした。ジャッジも緊張感はあるものの、やっぱり違う。「みなさん、やれるときに精一杯やるべきですよ〜」って、つい心の中で応援してました。(生意気ですが・・・)
 選手、ジャッジ、大会役員、地元の皆さん、本当にお疲れ様でした!
 
 
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