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国体アルペン競技のトレーナーサポートを終えて
横須賀共済病院 理学療法士 渡部政司


成年B 森川選手スタート

少年組と渡部トレーナー

神奈川県体育協会スポーツ医科学委員会トレーナー部会員
日本体育協会公認アスレティックトレーナー
横須賀共済病院 理学療法士 渡部政司

◆雪なし県、神奈川」のスキーヤーの皆さんに参考になれば

 りんどう国体に参加された選手、役員の皆さんお疲れ様でした。私は普段病院でリハビリテーションの仕事をしている理学療法士です。スポーツ場面でのトレーナー活動は県体協トレーナー部会のサポートするメディカルサービスステーションを中心に行っています。
 国体スキー競技(アルペン種目)のトレーナーは昨年の山形国体に続いて2 回目になりま
す。昨年に引き続き行ったトレーナーサポートの中で少し感じたこともあり、「雪なし県、神奈川」のスキーヤーの皆さんに参考になればと思い、この文章を作っています。

◆多くの選手から「腰痛」「背中の痛み」という問題

 昨年もそうでしたが、今年もまた多くの選手から「腰痛」「背中の痛み」という問題が聞かれました。最近の用具の進歩から技術変化があることも聞いています。それらの事柄を私なりに考えたことについて述べたいと思います。まず、選手に発生している腰・背中の問題について、その原因が大きく二つに分けられることです。一つは日常生活の中で起こっている問題がスキーを行うことによって腰・背中に負担をかけてしまっている。もう一つは極めて技術的な問題(本人の能力に負うところが多いので技能的と言ったほうが正確かも知れません。)だと思います。


開会式

少女Cインスペクション

◆股関節の伸展(後ろに蹴る動き)の柔軟性が低下

 日常生活の中で起こっている問題、簡単なことですが柔軟性の不足です。立ったり、歩いたり、跳んだりすることが少ない日常生活で、更に車に乗ることが多くなることによって股関節の伸展(後ろに蹴る動き)の柔軟性が低下します。この問題により車に乗る機会の多い職業運転手(タクシーの運転手・自動車学校の教官・トラックドライバーなど)で多くの方が腰痛に悩まされているのが現状です。雪なし県・神奈川のスキーヤーが練習するためには殆どの方が車でゲレンデへ行かれるのではないでしょうか?時間を節約するために充分なウォーミングアップやクールダウンをせずに滑っているスキーヤーが多いと思います。股関節の伸展柔軟性が失われると、人の多くは腰椎を前に反らせることで姿勢の代償を図ります。これが過度になると腰痛として出現します。スキー操作を行っているなかで股関節の動きは雪面を捉えるためにスムーズに動いてくれなければなりません。その動きの固さが腰に負担を招いていることが考えられました。柔軟性だけでは解決されるものではなく、他の筋力なども関連すると思いますが、まずスキー場への移動だけで問題を作らないように注意できればと思います。

◆腰・背筋の使い方

 次の技術的(技能的)問題は腰・背筋の使い方です。このことについて私は専門ではないので、もし間違っていたらお許し下さい。最近の技術論では「骨盤を立てて滑る」ということが言われています。これは前の問題ともかかるのですが、多くの人は腰を反らせるように力を入れないと骨盤を前傾(進行方向に向かって立てる)させられないのではないでしょうか?日常生活の中では殆どそのような力の入れ方をする場面がないと思います。
 普段使わない力の入れ方をスキーした時にだけするのであれば、それは筋肉痛となって出現するのは当たり前かも知れません。しかしながらスピード系の運動で腰を反り返らせて
行うものは少なく、むしろ背中を若干丸めたような姿勢になることが多いのではないかと思います。背中を反らせないで充分に骨盤を立てるには、先ほどの問題とは逆に股関節を充分に曲げる(胸の方に引き寄せる方向の動き)柔軟性が必要になります。そしてその姿勢を維持するには股関節を曲げる筋力が必要になります。腹筋と背筋で骨盤から肩の位置
をコントロールして、上半身が前傾を維持するのには股関節を曲げる力を使わなければな
りません。これは個人の筋力により非常に差が出る部分ではないかと思います。対策とし
ては筋力アップと使い方の学習・体験が必要なると思います。


少女田中選手レース前

少年福嶋選手
 以上、二回の国体トレーナーサポートから感じたことを簡単にまとめてみました。文面のみでは説明が分かりにくいこととは思いますが、SAKスキーヤーの参考にして頂ければ幸いと思います。最後にトレーナー活動を理解し、部屋の配慮をして頂きました、河口監督他、役員の皆様、県連総務の皆様に感謝します。
2005/3/13 記

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