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平成17年度指導員研修会・理論 |
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市野聖治委員長 |
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◆スキーの壁 昨年に引き続き、神奈川県の理論研修会に呼んでいただき光栄です。ただ、昨年と少し心境が変わっております。全日本の研修会でも色々と述べてきたのですが、私の話に批判的な内容も耳にするようになりました。市野の話は机上の空論でわからない。何を言っているのか解らないというものです。インターネット上でも、反論の文章がでました。そういったことからは、自分の言いたいことを言うだけでなく、理解していただくように話をしないといけないなと思っております。また、昨年より少しでも進んだ形でもお話が出来ればと思います。 今年は、「バカの壁」ではありませんが、「スキーの壁」というテーマとさせていただきました。どうしてもスポーツの中、スキーの中で理解し得ない壁があるのも事実だと思うのです。 |
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講演に熱の入る市野先生 |
これが内スキー主導 |
スライド01 |
スライド02 |
◆2004年度の反省反省としては、解説が「山回り」によるものに限定された事、また、雪も少なく雪上での理解が十分得られなかった事、指導者検定において、特にプルークボーゲン種目への理解不足が見受けられたということが挙げられます。 ◆感覚と科学
(スライド02)我々がスポーツを行うときに、プレーヤーの感覚というのは凄く大切です。何かをやろうと思うとき、自分の中に感覚的なものがなければ、うまく身体を動かすことができません。違う言葉で言えば、体である程度「理解」していないと「動け」ないということなのです。 ◆科学が勝利する 今年はアテネオリンピックがあり、いままでにない好成績を収めました。理由は、日本がある施策を打ったことにあります。東京の国立スポーツ科学センターで感覚と科学の擦り合わせることをしているのです。その結果、科学的な威力が発揮されたとも言われています。 |
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スライド03 |
スライド04 |
◆スキー界は大きな変化がおきている 今は、技術革新が凄い勢いで進んでいます。ロサンゼルスオリンピックの体操種目の鉄棒で10点満点を取った森末選手。今年のアテネでも体操男子が活躍いたしましたが、あの森末選手の完璧な演技だった10点満点は、今の点数に換算すると8.1だそうです。 ◆古い技術と新しい技術、変化できるものが生き残る
今、スキー界では、古い技術でうまい人、新しい技術で下手な人、こういう戦いが起こっているのです。(スライド03) ◆新しいものを手にしたい私が担当してから、指導員研修会の持ち方自体も変わってきています。今までの、決まったハウツー的な研修のパターンを伝達するという研修会から、そうではなく、新しいものをみんなで考えようというスタイルに変わっています。この問題についても批判があります。先日もびっくりしたのですが、市野はたいした情報も与えないで考えろ考えろと言うが、そんなことで考えられるわけがないと。これを理解していただくためにスライド04を持ってきました。典型的なのは、ドリルと革新的探求です。いままではドリルです。すでに知っていることを活用して何かを教える・練習していくのです。この関係は先生と生徒がはっきりします。しかし、変化に対応が出来ません。今まだ認識されていないけど、なにかやって行きたい、簡単なことではありませんが、革新的探求を求めていかなければ、新しいものは手に出来ません。 |
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スライド05 |
スライド06 |
◆2005年度の方針 今年は、谷回りのことを考えていきます。また、滑り手の感覚を大切にするということから、身体的な運動感覚について提示していき、内スキー始動の理解をしていただきたいと思います。(スライド05) |
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スライド07 |
スライド08 |
◆3つの身体運動 (スライド07)昨年、自然のエネルギーからスキーのエネルギーを強調しすぎたため、誤解がうまれました。特に、指導員検定のプルークボーゲンで顕著な差が生まれました。テールコントロールのプルークボーゲンですべて物理的なエネルギーを使ってターンさせる人が出てきました。これ自体は間違いではありませんが、ものすごく難しいです。緩斜面で低速ですから、ものすごい技術が必要です。結果として、テールコントロールのプルークボーゲンが検定種目の中で一番難しくなってしまうのです。 ◆荷重・角付の(外)と(内) (スライド08左)水平な面に対してターン内側に傾けることによりウエイトが乗り、水平面よりターン内側の傾き、ターン内側に落下する力を使います。これが「荷重・角付(内)」です。 |
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スライド09 |
スライド10 |
◆トップコントロールは、完全な「荷重・角付(内)トップコントロールは、内側股関節をたたんで、ターン内側に入って「荷重・角付(内)」でターンをさせましょうという話をしました。古い技術でうまい人たちは、この「荷重・角付(内)」の時に、外に傾く運動を起こします。特に技術選手権大会などで往年の名選手が出てきますと、非常に気になります。 ◆ショルダーファーストとヒップファースト 2輪車のことは良く解りませんので、2輪車の技術のことではありませんが、たまたま見ていましたら、ショルダーファイスト(スライド10上)とヒップファースト(スライド10下)という、2つのタイプがあるようです。 |
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スライド11 |
スライド12 |
◆合理的な運動は内回り? 外回り? どうしても、内スキー主導、2軸運動を理解していただくためには、内回りということを理解いただきたいのです。内回りは、歩いていて曲がる時に、内回りは内側の足から曲がります。外回りは外側の足から曲がります。内スキー主導は、当然、内側にのらないといけません。 |
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スライド13 |
スライド14 |
◆中心軸と2軸の違い中心軸で歩く場合、仮想軸になります。2軸の場合は、右足が出たらそれに乗っかっていけばいいのです。極端な例で、ものすごく疲れた時を考えてみてください。階段を登る時のイメージ、たぶん膝に手を乗せて右足に体重を乗せて上ります。右、左に体重を乗せてるわけです。2軸ということは、使うほうに体重を乗せるということです。つまり、自分のウエイト、重力をものすごく大切に使っているのです。それに対して、中心軸は筋力を使うのです。当然のことながら、どちらが効率的なのでしょうか。スキーの場合もこの考え方になれば、当然、内向、内傾、内スキーが効率的ということになります。 ◆身体運動から見たターンの発展 テールコントロール〜 (スライド14)テールコントロールが技術的に発展するとどうなるかといいますと、切り替え時の前半に大きな「抜重・回旋」の運動が見られます。あるところからは、完全な「荷重・角付(外)」になります。この「荷重・角付(外)」になるまでは、自分の筋力で移動させていくのです。抜重・回旋が小さくなることがテールコントロールでは技術的に高くなるのです。 |
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スライド13 |
スライド14 |
◆トップコントロールトップコントロールの習熟過程はどうなるかと言いますと、最初のうちはニュートラルゾーンがはっきりとあり、長いので回転弧は深くありません。習熟してきますと、ニュートラルゾーンは、ほとんどなくなります。その意味では、反対側から反対側へ一気に行きます。そして、内側への彫りこみが大きくなりますから、回転弧が深くなります。(スライド13) ◆内スキー主導 よく聞かれるのは、内スキー主導というのは、ターンの最初のところで内側に荷重することを言っているですか?というものです。ターン外側では荷重は外側に来てしまいますから、内スキー主導はターンの切り替えのところだけの話ですねというものです。 ◆内足を消していく(スライド14) ターンが始まり、内側にウエイトがのり、内足が短くなります。このとき、内側の足が邪魔になります。昨年も話をしましたが、古武術家の甲野さんのホームページの中で、アテネオリンピックに参加した陸上の選手との話が載っています。早く走るためには、前に出した足を消さないといけないとあります。前に出した足を消す。この時、はっと思いました。内側の足を消さないと、ターンし続けられないのです。あと、斜面があります。水平面より、外側の足が低くなります。普通はバンクといって外側が高くなるのですが、スキーの場合は外側が低くなるのです。回転の後半は、ウエイトを乗っけて落下エネルギーをドーンとつくることではなく、自ら消していくのです。重力を落下しながら曲げていくと、膝が耐えられなくなってしまいます。甲野さんは、足裏の垂直離脱と言われています。そう、上からの重力をと下からの力で離脱するような感じ。感覚の世界になってしまいますが、ぜひ、雪面の上でやってみていただきたいと思います。そうすれば、トップコントロールで半径の小さな回転弧を描くことが可能となります。 |
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スライド15 |
スライド16 |
◆トップコントロールの谷回り 昨年は、トップコントロールの山回りの説明をしました。(スライド15) |
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スライド17 |
スライド18 |
◆スキーというものは我々にとってどういう意味があるのか昨年、目的と手段の話をしました。今日お話しているのは、スキーの楽しさの手段としての技術、この技術をどのように指導していくのかというお話をしています。しかし、考えなければいけないのは、技術や手段を考えるとスキーが楽しくなってスポーツが楽しくなって、人生が豊かになるということではありません。スキーというものは我々にとってどういう意味があるかを考えないと、スキーヤーはどんどん減っていってしまうのです。 ◆トップコントロールが高度な技術はっきりと「抜重・回旋」を位置づけることで、テールコントロール、トップ&テールコントロール、トップコントロールが対等な技術であるという考え方から、むしろ、技術論的な考えでは、テールコントロールは、トップコントロールよりも低い技術、トップコントロールが一番高い技術であるわけです。 |
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スライド19 |
スライド20 |
◆中心軸から2軸への変化を去年もお話しましたが、スライド19の左は、2001年までの中日ドラゴンズの福留選手です。完全な中心軸運動です。右は2002年から、完全な2軸運動に変わりました。そういう意味では、左はテールコントロール、ヒップファースト、右はトップコントロール、ショルダーファーストということです。 (スライド19の写真は中日新聞に掲載されたものです) ◆2軸運動感覚は新しい運動2軸運動感覚ですが、重力による落下を引き出すために使います。そして、体幹部、つまり胴体が重要な役割をします。それから、荷重、角付という運動をおこないます。そして、内スキー主導となります。まったく新しい運動です。どちらかといいますと、新しい教程の説明では、あまり変わってはいませんという説明もあったのですが、私は、いままでのものとは、凄く変わったと言いたいと思います。 |
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スライド21 |
スライド22 |
◆今年のスキーは、肩甲骨で股関節だけでなく、肩甲骨も重要になります。2軸のイメージですが、肩甲骨でイメージするとわかりやすいと思います。ショルダーファーストになります。 ◆2軸で初めての人を指導できるアイデアぜひ、オフィシャルブックにあるDVDをぜひ見ていただきたいです。実は、トップコントロール主体で、2軸で、生まれて初めてスキーをする人から指導を出来るアイデアを入れてあります。いままでの、テールコントロール、プルークボーゲンを経ないでスキーを指導していくアイデアです。まだ完成されたものではありません。ある意味で条件設定がちゃんとしていないとうまくいかないかもしれませんが、その中で、大きなボールを抱えたものが解りやすいと思います。ぜひ、ご覧いただきたいと思います。 本日は、ありがとうございました。 掲載文章担当 上田英之総務本部長、 撮影 阿部文善総務本部専門委員 |
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