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指導員研修会理論

平成15年11月8日(土)大井智子 広報委員レポート

写真:指導員研修会理論 古郡副会長あいさつ
古郡敬一副会長

写真:指導員研修会理論 佐々木全日本理事あいさつ
佐々木峻 SAJ理事

◆2003年11月8日(土)、晴れ。
「2004年SAJ指導員研修会(理論)」が川崎市教育文化会館で午後12時にスタートした。舞台の下では2人の女性が、研修内容を手話通訳してくれる。



◆古郡敬一SAK副会長 楽しく滑る、楽しく教えるのがスキーの基本
 トップバッターは古郡敬一SAK副会長だ。「この行事が始まると、冬が近いと実感する。北海道では雪も降った。今年はスキー教程の全面改訂で、指導員の勉強の機会も増えると思う。楽しく滑る、楽しく教えるのがスキーの基本なので、それを忘れずにシーズンを迎えてほしい」と挨拶があった。

◆佐々木峻SAJ理事 今後も御三家に加われるように
 2番手に登場した、SAK特別役員の佐々木峻SAJ理事は、「たっぷり話すつもりのできたけれど3分と言われたので……」と残念そうに前置きしながら、「昨年からSAJのアルペンスキーのメンバーは、春とシーズンインにデモンストレーターと一緒にトレーニングを行っている。そこで練習するのは、斜滑降と横滑り。これが正しくできないと、世界で戦えないからだ。みんなも、ぜひ斜滑降と横滑りを生徒に正しく教えてもらいたい。これが、スキーを正しく滑る、もとのもと。初めてスキーをやる人がいたら、きちんと教えていいスキーヤーを発掘してほしい」と話した。
 さらに佐々木氏は、「SAKの登録人口は全国第3位だが、近年は第4位の長野県と順位がよく入れ替わる。登録人口の多さは、東京、北海道、神奈川という順で長年続いてきた。今後も御三家に加われるように、多くの登録人口を確保していきたい」と続けた。

◆役員紹介
 さらに、司会の木村徳善SAK理事から壇上の役員・顧問の紹介があった。いずれもSAKの、古郡敬一副会長、廣瀬稔副会長、山田隆専務理事、片忠夫常務理事、渡辺三郎教育本部長、井駒利一監事、徳田盾夫監事、片岡春夫顧問、楓山一登顧問のメンバーだ。

写真:指導員研修会理論 役員
役員紹介

写真:指導員研修会理論 山田専務理事の教程の改訂に関して
山田専務理事

◆山田専務理事 SAJ/SAKの現状とスキー教程改訂および検定規定改定
 次に、SAJ教育本部専門委員やSAJ広報委員会委員長を務め、今回のスキー教程改訂に大きな役割を果たした、山田SAK専務理事から「SAJ/SAKの現状とスキー教程改訂および検定規定改定について」の話があった。上田英之SAK理事とともに、SAJ編集委員・編集作業委員として改訂作業の一部始終を体験した話は、たいへん興味深いものだった。
 山田専務理事の話によると、改訂に伴い大きく変化したのは以下のような点だ。
@ 「基礎スキー」の呼称は、今後はただの「スキー」に
「競技選手がわれわれとまったく同じ板を履くようになり、佐々木理事の話にもあったように、SAJ競技本部の練習に斜滑降と横滑りを取り入れる時代になった。それに合わせてSAJ教育本部でも、『基礎スキーと呼ぶのはやめて、ただ、スキーと呼ぼう』ということになった。SAKでもそうしようと思う」
A「ゼッケン」は「ビブ」に
「これまで選手の胸につけていた『ゼッケン』は、全日本技術選手権でも今後は『ビブ』と呼ぶことになった。SAKも今シーズンは「ビブナンバー○○番」とアナウンスすることになる」
B「技術指導」ではなく、「学習指導」を
「スキー界に携わって40年。この40年間で、一番簡単な教程になっていると感じた。最近まで、4、5冊だった教程は、この1冊とほかの1冊だけで内容が一元化されている。SAJ教育本部の考え方としては、スキーの性能が良くなって技術として教えるものが少なくなった、ということがある。行きたい方向にひざを曲げ、頭を向けたら曲がることができる。雪がしんしんと降る中でゲレンデに生徒をずらりと並べ、スキージャーナルや教程に書いてあることを、生徒の肩に雪が積もるほどエンエンと話すのは、もうやめよう。そうした『技術指導』ではなく、その生徒がどうしたらうまくなるか、悪いところはどこかを指摘する『学習指導』中心の指導をしようと、教程の中身は変わってきている」
 そして、もっとも興味深かったのが、以下の4点目についての山田専務の話だった。
Cこれまでの教程は強いリーダーによる意見をベースに1つの視点でつくられてきたが、今年はスキーの流れに2つの大きな違いがあり、その違いを許容する教程になっている
「教程は、パート1、2の『スキー理論』、パート3の『技術指導』、パート4、5の『指導活動』『用具』で構成される。重要なのは1から3だ。パート1、2は本日、講義をお願いしている市野聖治氏が執筆し、パート3は平川仁彦氏が執筆した」。その両者の意見が異なっているというのだ。内向、内傾、内スキー主導の滑り方が操作しやすく合理的と主張する市野氏と、外向傾と谷足荷重が大切だと説く平川氏。
 山田専務は「オーストリアの氷河の上では、各国のナショナルチームの選手が、外足、外向で、斜滑降や横滑りを練習しているという。外向傾、谷足荷重は大切で、外向きに外足に乗らないと遠心力に耐えられない。私自身は、子供のころから仲良くしている平川さんの、そうした意見に共感している」が、ともにSAJで改訂作業に携わった上田理事は「いや、専務。市野さんの理論には説得力があります」と意見が異なったという。互いに「今シーズン、雪上で決着つけよう」と思っているらしい。
 さらに山田専務は、次のように強調する。
「意見が違うということは、非常に重要なことだと思う。たいへん貴重な問題だ。これまでは、日本スキー界のトップが右と言ったら、みんな右を向いてきた。2つの意見がぶつかって編集作業が前に進まなかった時期もあるが、平川さんも市野さんも互いの意見の違いを認めつつ、改訂作業にのぞんだ。これまでは、たとえば25人の生徒に『そこに並べ』『先生の言う通りに滑ってみろ』と、すべて同じことを一方的に教えてきた。だが、『学習指導』ということになれば、複数の生徒に対して複数の教え方や指導があって構わない。雪面の状況はいろいろ変わる。晴れの日、曇りの日もあるし、距離やスピードの差もある。そうした中で、生徒に喜んでもらえる指導をしなければいけない。登録会員も資格受検者も減る中で、会員が一人でも増えるようなスキー指導をしてほしい」
 また、検定方法については、「点数で付けるのは今まで通りだが、それをあとから○×にしてジャッジする。白旗2本で合格、赤旗2本で不合格という、柔道や剣道と同じジャッジ方法で、よりフェアになったと考えている。最初は戸惑いがあると思うが、改訂した教程や検定規定について疑念や意見があったら、遠慮なく、専門委員や理事に申し出てほしい。少しでも役に立つ規則に変えていきたい。シーズンが終わるまで5、6カ月。ケガのないシーズンを過ごしてほしい」と話し、最後を締めくくった。

写真:指導員研修会理論 手話通訳
研修内容を手話通訳中

写真:指導員研修会理論 渡辺教育本部長
渡辺三郎教育本部長

◆渡辺教育本部長 教育本部の執行方針
 続いて、渡辺教育本部長から「教育本部の執行方針」として、以下ような報告があった。
「北海道行事でのアンケートや活性化委員会の答申を受けて、各行事をいい方向に変えていきたいと考えている。今シーズンもよろしくお願いしたい」
「10/19と11/2に指導員養成講習会の理論をすでに行った。参加者は去年より20人ほど減っている。締め切りはまだ先なので一人でも多くの受検者をつのっていきたい」
「『SAK手続き要領』でお知らせしたように、毎年12上旬に行われていた南関東ブロックの研修会が、教程の改訂などで今年は中止になった。11月下旬に中央研修会が行われる。これを受け、車山の研修会行事の日程を12月上旬に戻した。また、北海道行事ではクラウン・テクニカル受検を実施する。千葉県スキー連盟(SAC)にも行事参加を呼びかけている。野辺山行事は1/3、1/4だが、車山行事に集中することなく野辺山にも参加してほしい」
「第3回神奈川県・千葉県スキー技術選手権大会は、今シーズンはSAKが主催。前回からクラブ対抗選を設けたが、1チーム3人以上で参加できるのでどんどん参加してほしい。少しでも『見ていて楽しい種目』に変更したい。ムードを盛り上げるために、応援するクラブでのぼりや横断幕を用意してくれるのもいい」
「第3回環富士山スキー技術選手権大会も今回はSAKが主管。前回は1都1府7県が参加した。今シーズンはシニア部門を充実させ、男子50才以上と60才以上のクラスを設けた。昔のデモ選手にもぜひ参加してもらいたい」
 最後に渡辺教育本部長は、「検定の骨子が変わったので、そこはクリニックで伝えていきたい」と話し、次のビデオ研修へと引き継いだ。

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