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指導員研修会理論 広報委員総力レポート
平成14年11月16日(土)川崎市教育文化会館
広報委員:大井智子、川添徹、三浦亜矢子、小池資治、中里健二
古郡副会長、片岡顧問、徳田監事、井駒監事
司会の清水理事
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理論研修会
12:00 開   会 清水理事
  副会長挨拶 古郡副会長
  SAJ立会い責任者・主管県連責任者 山田専務理事
  教育本部執行方針および研修会テーマについて 渡辺教育本部部長
12:30 スキー技術(実践的)について 堀専門委員
13:00 スキーのトレーニングについて 竹腰専門委
13:40 スキーレクチャー 各社
14:30 安全対策委員会より報告 和田専門委員
15:40 北海道ツアープレゼンテーション 北海道PJ
16:00 庶務連絡 菊池理事
  研修会終了後の舞台裏/広報委員のつぶやき 広報委員総力レポ
◆総括責任者あいさつ/古郡敬一SAK副会長
◆今年は冬の訪れが早い
 「2003年基礎スキー指導員研修会(理論)」は,古郡SAK副会長の次のようなあいさつでスタートした。
「今年は冬の訪れが早い。雪の便りをあちこちで聞く。八方尾根のリフトはすでに動き始めたようだ。このまま『雪のあるシーズン』を迎えたい」。
「神奈川県スキー連盟(SAK)の会員登録は約7000人で,全国3位。約2450人の有資格者がいる。ただ最近は,スキー業界を取り巻く環境はますます厳しいものになっている。
 
◆スキーヤーを増やす為のプロジェクト
 スキーヤーの減少,教育者の減少に歯止めをかけるために,SAK独自のプロジェクトを発足させた」。
「1級資格保持者の減少に伴い,準指受験者も1割ほど減るのではと危惧している。各地区で級別テストを開催するなど,1級資格保持者を増やす努力をしてほしい。各協会にいい人材がいたら,ぜひ,『スキーヤーを増やすためのSAKのプロジェクト』に人材を送り出してほしい」。
そして古郡氏は,「SAK活性化のためにがんばってほしい」と,最後を結んだ。
◆SAJ立会い責任者・主管県連責任者/山田専務理事
 「北海道行事参加者や準指導員受検者も、昨年比2割減であり、この研修会の参加者も昨年に比べて少ないのが大変残念である」と、少し暗い話でスタートした。
SAJ教育本部中央研修会において、「中央研修会理論は、技術の伝達の場でなくなった」「オフィシャルブックのプロローグでも書かれているとおり、創意と工夫でやってもらいたい」との話があったとのこと。今後はスキー技術以外の、スキーを楽しませる技術、エンターテイメント性が求められるようになるであろうとのこと。これは、都会の指導者にとってはある意味、有利との話には、うなずいた人も多かったのではないだろか。
 
 最後に、「カービングの技術や道具にばかりにとらわれず、スキー場に来てもらったお客さんが、古い道具を使っていようとも、まずは、スキーの楽しさを伝えることが大事である」との話で締めくくった。自分がスキーにのめり込んだ時期には、とにかく滑ることが楽しかったことを思い出させた。
続いて上映された、研修会テーマビデオ「2002〜2003年指導員研修会テーマ・スキー指導の目標と組み立て」終了後、再度演台に立った山田専務は、「自分たちが興味をもてない滑り方は、教えなくても良い。嫌われないためにも、教えてもらいたいと言われてから、教えた方が良い」との話には、最近のスキー界の状況に対する、苛立ちと、それを打破したいという気持ちが感じられた。
◆教育本部執行方針について/渡辺教育本部長

 続いて,渡辺SAK教育本部長から,SAKの執行方針と研修会テーマについての話があった。
 今年は役員改選の年。去年までの教育本部専門委員は14,5人がやめて,新人10人を含む約60人が選ばれた。「専門委員をいかに活性化させるか」をテーマに,活動を開始しているという。

今シーズン大きく変わった点は,主に以下の3つ。
@ 12月初めの車山研修が12月下旬の実施になった(車山の参加者はこれまで700人を超えており,十分な研修が行えなかった。今年は北海道行事からスタートすることになる)。

A 千葉県と共催する「スキー技術選手権大会」では,今年から神奈川も「クラブ対抗戦」を導入した(男女混合で3人から5人の単位)。審査方式は,これまでの5審3採用をやめて5審5採用を導入(いい採点をしても採用されず,結果として「ダンゴ状」の採点になるのはどうか,という意見を反映)。併設していた「B,C級公認検定員検定会」はやめて,技術選1本に絞った。

B 「環富士山スキー技術選手権」は今期より正式行事に。今回は静岡県主管で行うが,山梨県も参加することになった。オープン参加なので,他県の人も参加できる。
女子2部リーグも新設した。
 次に,「研修会テーマ」についての解説が,「研修会資料」を参照しながら行われた。内容は,以下の通り。

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 研修会のテーマは9ページに書かれている。ターンの構成要素が「舵とり・切り換え・舵とり」で,「トップコントロール」と「テールコントロール」があることなど,内容は去年から言われているものと同じ。11ページにあるように,強いて言えば,今年度の技術テーマは「スキーの落下運動に着目している」ということだ。
 スキーの落下運動の種類は,図3−2にあるように,「カービング」「斜滑降」「スキッディング」の3通り。
 16ページの「5.ターンの組み立て例」に書いてあるように,「これまではテールコントロールを中心としたターン運動が組み立てられてきたが,今後の可能性として,トップコントロールを中心にしたターン運動の組み立てが指導の現場で求められている」ということだ。

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 さらに渡辺教育本部長は,「ほとんどの指導員はカービングの板をはいているが,一般スキーヤーでカービングをはいている人は2,3割ではないか。そうした人がトップコントロールをしようとしても困難だ。やはり,一般スキーヤーは押し出し操作が主流だと思う」と話し,「状況,条件によって,スキッディングとカービングを使い分けるべきだ。そのことを念頭において,今シーズン活動を行ってほしい」と,最後を締めくくった。

◆スキー技術について 堀専門委員

・技術選におけるテクニックと
   神奈川県選手の現状
・スノースポーツの多様性
・これからの指導者は

★スキー技術について(※)

◆スキーのトレーニングについて 竹腰専門委員

 竹腰さんは今期2期目を迎えるSAK専門委員で、大学で保険体育の講師をしている。大学時代、競技スキーをする傍らニシザワスキーから依頼され、教員を目指しながらトレーナーをしていた。現在も大学の講師という職につきながら、渡辺一樹、志鷹真吾などという有名選手のトレーナーを務める。

 トレーニングは、健康、スタイル維持という目的から筋力アップ、技術力向上など、その目的は人によって様々だ。「カービングの出現により、体への負担が大きくなった」。カービングスキーは、高速の抵抗力をつけるため滑走時の姿勢が低くなる。そのため体への負担が大きくなるのだそうだ。それとともに、膝への傷害も多くなっている。「カービングスキーによる膝などへの傷害の件数は今後さらに増える」と竹腰さんは話した。

 スキーというスポーツが一体どのくらいの運動量なのか。体重60kgの男性が1時間滑走した場合、475kcalの消費になる。サッカー1時間(500kcal)、バドミントン(514kcal)に匹敵するスポーツだ。サイクリングでは15km/hのスピードで1時間運動した場合約400kcal、急歩6km/hで1時間歩くと約360kcal。水泳では、25mを50秒くらいのスピードで1時間泳ぐと約360kcalになる。スキーは運動量の多いスポーツの1つだと言える。

 スポーツ(スキー)のレベルをより向上させるためにはどうすればよいか。スキーは、バランスとリズム(平衡性)が要求され、かつ、正確に素早く動作の切り替えをしなければならない(敏捷性)スポーツだ。特に求められるのは筋力、持久力、柔軟性。「普段の生活において気をつけるだけで効果があがることもある」と竹腰さんは説明する。例えば、いすに座った状態で体を左右にひねると、やりやすい方とやりにくい方がある。これは左右のバランスが悪いためだ。スキーのターンにおいても得意、不得意な方向があるだろう。いすに座って足を組んだ時もやりやすい方とやりにくい方があると思うが、これは、左右の力の入り加減(骨盤の動き)が違うために起こる。スキーでは骨盤の動きは重要だ。これらはストレッチやトレーニングで改善することができるのだ。

 スポーツ(スキー)を楽しむには、自分の体力レベルを把握すること。スキーをする上で、できることとできないことを把握する。そうすれば無理をしないし、ケガもしなくて済む。また、そのスポーツに合った準備(ストレッチやトレーニング)を行うことも大切だ。体力レベルの差によって楽しみ方にも差がでてくる。筋力、技術力のある人はレク的スポーツ活動としても、競技志向の強いスポーツ活動としても楽しむことができる。

 スキーヤーの数は減少傾向にある。「これからは個人の体力レベルに合ったスキーの楽しみ方をさぐり、普及に携わっていけばよいのでは」。スキーを個人のメインのスポーツとして、個人の体力レベルに合わせて楽しむことを伝えることがスキーの普及につながるのだ。

◆スキーレクチャー
 まず、HTM取締役、日本輸入協会理事 小池さんに、「もの」「場」「サービス」について説明して頂きました。
「もの」としては、
・スキーの板を1月から試乗会を実施→先シーズンで5000人が試乗
・板、ブーツ、ビンディングの一体にして、開発
・昨年3月にスキーの明日を考える会のシンポジウムを開催
と、ものの面から、スキーの普及に力を入れているお話をして頂きました。
HTM取締役 小池さん


 「場」としては、交通渋滞や、初心者の7〜8割の人が二度と行きたくないと思うことから、スキー場の改善案を進めていきたいとのこと。
 最後に、指導者の方々へスキーの楽しさをできるだけ多くの人に伝えて下さいと、
お話を締めくくられました。
 他に、去年は、1,350万人の人がスキー場に来ており、人口の約1割がしているスポーツは他にはないと、説明して頂いたことが印象に残りました。
HTM 神山さん

 つぎにHTM、OGSAKA、BOYAの製品紹介をしていただきました。
この紹介の中で一番驚いたのは、カービングスキーの普及率は、30%ということです。我々の場合から考えると、普及率は、90%を越えていると思っていただけに、余計驚き
ました。ただ、逆に考えると、一般の人は、最近あまり新たにスキーの板を購入していないことを示しているのではないかと思い、ちょっと、残念です。
オガサカスキー 庚さん

 スキーメーカーの方々の説明は、それぞれのメーカーが力を入れている製品を紹介しており、新しい技術や、それに付随する話を聞くことができて、とても有意義に感じました。来年からは、他のメーカーの方々の製品紹介や、スキーに対する取り組み方なども紹介して頂きたいと思いました。
ビー・エスト 皆川さん
 
◆安全対策委員会報告 和田専門委員
 1999年から行なっているスキー傷害アンケートの集計結果について報告があった。
 事故発生時間は午前11時と午後2時に集中しており、年齢では21才〜30才が多く、男女による差はほとんど見られないとのことであった。
 どのようなときに事故が多く起きているかについては、「自由滑走中」が最も多く、原因は「自分で転倒」が最も多いとのこと。
 傷害名では「打撲」、「捻挫」、傷害部位では「膝」が一番多いとのこと。
講習外での事故については、個人の責任と言えばそれまでだが、個人に戻ったときの安全意識を高める必要があるとのこと。また、体力(筋肉)を鍛えておけば、事故にあっても大きなケガにはつながらないとの意見であった。
 間もなくシーズンインであるが、からだを動かし体調を整え、くれぐれもケガをせずにスキーを楽しみたいものである。
◆北海道プロジェクト
 片常務理事から、最近のSAJ登録数や指導者数の状況について、グラフをもとに説明があった後、北海道ツアープロジェクトスタッフのQ&A方式による「北海道ツアー」の紹介が行なわれた。お金と暇がある人はもちろん、ない人でも、参加すれば色々とメリットがあるようなので、ぜひ参加すべし!

◆ハンディキャップ委員会からのお知らせ

 ハンデイキャップ(HC)委員会が発足して3シーズン目に入った。HC参加可の行事に、サポートしていただける指導員を募集しているとのこと。神奈川県は全国に先駆けてHCに取組んでおり、日本の先進モデルとして確立していきたい考えであり、指導員の皆さんに対して協力要請があった。
具体的な申込みについては、SAK教育本部行事申込書の備考欄、HC講師協力可否にチェックを入れてもらいたいとの話があった。

◆研修会終了後の舞台裏/広報委員のつぶやき

理論研修会と同時並行で,舞台裏の控え室で行われていた理事会も終了し,役員一同が控え室に集合した。山田隆SAK専務理事と古郡敬一SAK副会長から「研修会などへの参加者が減っている。そのことへの自覚と,今後の努力を忘れないでほしい」と話があり,「ごくろうさまでした」と一同解散した。

 これで今シーズンがスタートする。すでに雪は降っている。あちこちのスキー場もオープンした。シーズン前に行われた理事会や専門委員会では,「厳しいスキー業界」に対する警鐘を何度も聞いた。それに対するSAK独自の新しい試みや,さまざまなプロジェクトもスタートしようとしている。

 これからスキー業界はどうなっていくのだろう。華々しくデビューした「カービングスキー」の行く末やいかに……。

 これからの指導員像は,カービングもスキッディングも,状況に応じて自分の引出しから出せる「幅の広い指導者」が理想なのだろう。わたしもサイドカーブのきついカービングスキーをはいている。新雪をバンバン行ったり,ひねったりずらしたりするのは得意だけど,なかなか従来型のスキーから脱却できずに泣いている。

 今日の教えは,「本質を見失わないようにしましょう」ということかもしれない。「カービング」とか「スキッディング」だけにとらわれず,「本当のスキーの楽しさを伝えられる」自分の個性を大切にしようということかな。

 どんなにスキー業界が厳しい状況でも,「アットホーム」で「楽しいスキー」を展開するSAKらしさだけはなくしたくない。そのためにも現状から目をそらさず,自分ができることをひとつずつやっていこうと思った。無理せず,背伸びせず。それで,自分ができることをひとつずつ,増やす努力をしていこう。
さて,いよいよ今年は正念場だ。

(レポート担当広報委員:大井智子、川添徹、三浦亜矢子、小池資治、中里健二)


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