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第2回全日本カービング選手権大会

神奈川7名のチャレンジャー 教育本部専門委員 加賀義人

◆7名のチャレンジャー

 2度目の参加となりましたこのカービングスキー選手権、我々チーム神奈川も参加人数を昨年の4名から男女合わせて7名に増やし、やる気満々チャレンジ精神を前面に押し出し尾瀬岩鞍スキ−リゾートの雪の上に足を運んでまいりました。
 公式日程は昨年同様、金曜日の公開練習そして土/日曜日での予選から決勝となる運びの中、全日程がほぼ晴天という昨年の猛吹雪を考えれば、それはもう恵まれた空の下、気分爽快なものでした。

 昨年はこの場をお借りし、大会そのものの雰囲気をお伝えしましたが、今回は2度目という事も含め、ここから先は選手達の大会内容をドキュメント的にお伝えして行こうと思います。


◆予選初日、澄み切った空、眩しい太陽

 予選初日、澄み切った空、眩しい太陽、少し緩み始めた早朝のバーン、4つのエッジに輝く太陽の光、迷いの無い深いサイドカーブを描いたマテリアル、どれをも味方に付けたいスタート前の心境。時間が流れるに連れ、固体から液体へと融解していく目の前のバーン、どんどん蒸発して行く雪の音は足元を蝕んで行くかの様に微かに耳元に響いてくる、“これ以上融けてくれるな”っと心で願う。
 などと気取っている場合ではないのだ、スタートの順番は前夜のドロー方式により既に決定されている。この時期この天候の中バーン状況を考えるとスタートは早いにこした事は無いので有る。
 いくら午前中とはいえ、硫安によりマジックパックされたバーン、どこまでエッジが食い込むやら、まずはインスペクションで探りを入れ、その探りで得たものをどこまで実行するか、クリアーブイのイメージ、そして滑走タイム、全てはポイントに換算され結果が叩き付けられるので在る。

 

◆このまま行けば予選通過、準決勝に駒を進められる確率は高い

 ゲレシュプの様な高いスタート台、勢いを付ける為のグリップバーとでも言うのか、スタート台に立った時、自分の身体の両サイドにはこのバーが整然と立つ。この大会ならではの特有な設定風景なので有る。
 予選開始、全国から条件的に参加の認められた強者(ツワモノ)達がスタートを切る。
 まずは1stアタック、平均タイム/平均ポイントが少しずつ判ってくる最中我々の中で一番早いスタート順は翠川和也、そして後に続くのは、筆者、簑島新一、谷川聡郎、小林英二、田中淳、女性陣では高木彩と続く。どうやら予選通過のポイントラインは108ポイント前後がボーダーラインの陰りをみせているのであった。予選通過は40位迄となっている。
 戦略、タイム狙い重視で行くか、ブイ・クリアーポイント重視で行くのか、何れの選択は選手に委ねられる所である。
 ポイントが少なければ少ないほど良いこのルール、翠川が105.82ポイントをゲット、このまま行けば決勝まで行けそうなポイントである。そして筆者の私は108.3ポイント、後続の簑島が110.28ポイント、谷川が107.16ポイント、小林は107.31、田中が111.79ポイント、高木の116.13ポイント、このまま行けば予選通過、準決勝に駒を進められるチームとしてのパーセンテージは70%を超える所に在る。しかし、スタートしてない選手は未だ他にもいる。

 

◆選手たちの脳裡は戦略で一杯だ

 1stアタックの結果、翠川/21位、谷川/30位、小林/33位、筆者/40位,簑島/52位、田中/58位、女性陣の高木は11位という結果である。
 2ndアタック、太陽は我々の真上に位置しバーン状況はまさに春スキー状態そのものと化している。
 選手たちの脳裡には1stアタックの巻き返し、そしてさらなる戦略で一杯になっているはずである。
 2ndアタックの結果、翠川/35位、田中/37位、筆者/38位、谷川/41位、小林/46位、簑島55位、高木は10位、コンディションの変化が伴う流れの中、我々チーム内の順位も激しく入り乱れる予選内容となったのであった。

 

◆さて、神奈川の予選通過者は

 2回のアタックで良いほうのポイントが採用される予選形式、予選通過の公式リザルトが掲示された。翠川/21位、谷川/31位、小林/34位、筆者/41位、簑島/53位、田中/55位,高木/12位、男子予選通過は3名、女子1名、トータル4名の予選通過と言う結果が得られた。
 私の期待としては最低でも男子4名の通過を考えていたのだが、その4人目の通過の期待を裏切ったのは筆者自身で有りました。悔やみに悔やめない41位なので有りました。そう、通過ラインは40位迄なのでした。1stアタックの保険の無い40位、一人でも巻き返しを食らうと予選落ち、それがみごとに的中してしまい昨年の経験を持つ私は他6名に申し訳ない気持ちでありました。
 準決勝に駒を進める、翠川、谷川、小林、高木、期待はこの4人にかかる流れとなる。
 それぞれの戦略は色々あったであろう。しかし、思い通りに事が運ばないのが勝負の世界、何れのスポーツの世界でも同じ事であろう。

 

◆小林くん、君のために体脂肪燃焼しそこねることに…

  翌日、準決勝の開始。スタートリストは成績順とは逆のスタートとなる、我々の中で一番最初のスタートは小林、頼むぞ!と思いきや5ブイ目をクリアーした直後に上体のローテイションが早すぎたのかテールを取られてしまい1回転、オイ!オイ!オイ!転倒するかと思いきや、なんとか立て直しゴールまで辿り着く。

 私は思わず飲んでいた協賛メーカーの無料配布されていた明治乳業の“ヴァーム”が口からこぼれ落ち、体脂肪を燃焼しそこねてしまった。ロスタイムが大き過ぎる、終ったな! 

 

◆オイリータニガワ!

 そして谷川、前日の予選終了後、硫安のドレッシングがたっぷりとまぶされたマテリアルの滑走面を洗い流そうとゲレンデ下レストハウス前で見つけたガソリンスタンドの給油機に似た物体、“これ水ですよね!”とつぶやきながら給油機の元に有った蛇口をすかさずひねり手を差し伸べ不思議そうな顔をする谷川、これ水じゃないですよね?ヌルヌルしますよ?どれどれ、灯油だよこれ!手は灯油にまみれ谷川の周りは灯油臭い、危機一髪でマテリアルの運命は間逃れた。
 このハプニングを、大会中のD.Jが読み上げてくれるメッセージに添え書きで提出していた谷川、スタート直後にD.Jのマッスルが読み上げた内容は、ハプニングの内容もしかり、神奈川県の選手、“オイリータニガワ”がスタート、と命名を受けていた。まさに油まみれの谷川、ポイントはまずまずといった所。

 

◆フローレンスがよく似合うスーパーサイヤ人?

 そして期待のかかる翠川、天国に一番近い男と言うよりは、決勝進出に一番近いと思われるフローレンスがよく似合うスーパーサイヤ人、谷川同様読み上げられたD.Jマッスルのコメントはどこかで聞いた事のあるコメント、そう全日本の技術選手権のコメント同様、神奈川県の“カミソリカズヤ”がスタート、“雪無し県の意地を見せてやる”といった心強いコメント内容、そしてゴ−ル。思う程にポイントがでない。

 

◆決勝進出を決めたのはただ1人

 いよいよ最後のランナー、紅一点高木がスタート、普通に来ればなんの心配もなく女子の場合参加人数の関係も有り予選17名から準決勝進出は全員、決勝進出が15名と2名だけが敗退し、これまでの高木の成績からすればなんら心配の無い所であろう!
 準決勝公式リザルトが掲示される! 思わず息を呑む、残念、無念、男子決勝進出は20名、翠川/22位、谷川/23位、小林/39位、あと少しの所で決勝進出の切符を手にする事ができなかったのであった。高木は12位で決勝進出、唯一1名が決勝に駒を進める事となる。
 よっぽど悔しかったのだろう、あと2つの順位が泣きをみる結果に及んだ翠川、グローブを脱ぐなり“チキショウ〜”のセリフと共にグローブを雪の上に叩き付ける。若いってイイヨナ〜!

 

◆12個の瞳が高木に注目

 決勝、男性陣の無念の思いを一心に背負いスタート地点に向かう高木、どんな大会であれ決勝ともなると心の中は期待と不安がスクランブルするであろう、そんな高木にクリアーブイのアドバイス、そして戦略の指示を冷静そうに聞き入れる高木、その顔は余裕で微笑んでいるのか、それとも少しの不安で引きつっている微笑なのか、いや、ゴールで待ち受ける彼氏の事を思ってか!
 いよいよ高木のスタートが巡って来る、我々はスタート地点の高木に“頑張れよ”の言葉を残し、ゴールの見えないバーンを見つめる彼女の姿を見送りながら下へと向かう。
 12個の瞳が高木のカービングを迎い入れる様にゴールエリアから注目する!

 

◆決勝まで頑張ってくれた高木にエールを送る

 D.Jマッスルがスタート後の模様をコメントする、そう、ゴール付近からはスタート直後のうねった設定のコースは様子が伺えない状態にあるのだ。来たぞ来たぞ!よし、そのまま来いよ!ん〜何!!やってしまいました。3つ目のブイを超えた直後の事、自爆!!!予期せぬ転倒劇、気が動転しているせいか転倒地点のブイをクリアーせず次のブイから入りゴール迄たどり着く。  “Oh my God!”DID NOT FINISH FINAL RUN = DQ そう、ブイを1つパスした事で掲示板のポイントが計測されないのです。ゴールした高木に、“だめだよ戻らないと!” と外野が言いつつも、少しだけ顎の下を擦ったのか、出血している高木の顔にカットバンを貼り付け、大丈夫かの返答にハイと答える。息の切れた到達感のあるその姿、本当の所はどうなのだろう、あの微笑みは・・・・・。
 結果を残せなかった事は残念では有るが、決勝まで頑張ってくれた高木にエールを送りたい。そして、他5人のチャレンジャー達にもこの場を借りて “又、宜しく!” と伝えたい。

 

◆上位リザルトを総なめ状態は

 この勝負の展開中、各々選手達は勝つために幾つものシミュレーションを頭の中で戦略展開した事だろう。スピードを取るかポイントを取るか、の選択により順位が大きく変化する。速いだけでは勝てない、いかにブイポイントを稼ぐかで勝利の方向へ導きを得られるか、この大会の性格がいかに難しいものか、そして面白いものであるかを今回出場したメンバーは体験したであろう。
 協賛メーカーが昨年と若干入れ替わる中、新しく参入して来た某 “O”メーカー、今回の大会を、ターゲットとするかの様にカービング・カップ専用の板を開発し挑んできた、その成果が見事に結果を彩る様に上位リザルトを総なめ状態としていた。低迷しているこのスキー業界、それでもこうしてウィンターな業界の中で新しい方向性を見つけようと頑張ってくるスキーメーカー、弛まぬ努力を惜しまず投入してくる所に拍手を送りたい思う。

 

◆みなさんも是非大会にチャレンジしてみてはいかかでしょうか

 末端ではスキー場単位での主催でカービング・カップも実施され、少しずつ一般の人達からも認識されつつ有るこの大会、イベント性が高く、参加者みんなが楽しめる大会として私自身も認識している。
 全日本の大会は特別なものとしても、各々末端で開催されるカービング・カップは充分に楽しめる要素が有ります。このホームページを見ている皆さんも来シーズン、是非チャレンジされてみてはいかがでしょう! 私自身も又、カービング・カップをはじめ色々な大会にチャレンジして行きたいと考えて居ります。


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